寒い!
日本の中でも比較的暖かいここ大阪の平野部でも12月になるとさすがに明け方の最低気温が0℃近くまで冷え込み、植物たちにも人間たちにも辛い季節になってきました。
こうなってくると「多肉がやばい!」「屋内に取り込まなきゃ!」「部屋にもうこれ以上置けない!」なんて声が聞こえてきますが、我が家ではほとんど室内に取り込みません。なんで?枯れないの?
そう。今日はその多肉植物の冬越のポイントを「枯れる原因」に着目して考えます。
まず多肉植物のイメージを覆す写真がこちら。
多肉植物は砂漠に住む植物だから、寒さなんて全く知らないんでしょ? そりゃ寒さに当たったらショックで死んじゃうよね……というのはちょっと短絡的。砂漠は遮るものがなにもないので寒暖差が激しく、特に北米では雪に覆われる砂漠地帯というのが結構あります。それに高山エリアだから雨が少なく多肉の楽園というそもそも寒い環境にお住まいのかたもいらっしゃいます。もちろん、本当に寒さとは無縁の熱帯エリアご出身のかたもいます。
何が言いたいかと言うと、ケースバイケースです。日本の冬なんて痛くもかゆくもないコもいるので、本当に慌てる必要があるか落ち着いて考えてみましょう、と。
詳しい理由は端折りますが、植物は凍ると死にます。なので、凍らないようにするというのが冬越の基本的なポイントの1つ。対策としては、
- 温室を買う
- ビニールや不織布で覆う
- 室内に入れる
という「逃げ」の対策と、
- 太陽にいっぱい当てて養分を蓄えさせる
- 水を控えてシワシワにしておく
- さらに厳しい環境に置いて葉っぱを閉じたまんまるロゼットにしておく
という「攻め」の対策があります。
もう1つの冬越しのポイントとして、氷点下じゃないのに寒さで枯れるという現象があります。凍ってないのになぜ枯れるのか? それは寒さで植物の代謝が減って、栄養不足か雑菌に負けてしまう……えーと、わかりやすく言うと元気がなくなって、病気になってしまうということです。
こちらは寒さに当たると死ぬという、さらに厳しい条件なので対策としては、
- 温室を買う
- 室内に入れる
という2択しかありません。いや1択ですね。お金も土地もないので、室内に取り込みましょう!
寒いの怖い!ので、簡易温室やビニールで覆ったり、室内に取り込んだら良いんでしょとしたくなってきますよね。
でも、窓を閉めた室内やビニールカバーの中は風通しが悪い上に、そこに陽が当たると日中に時として40℃を超える思いがけない高温になることがあります。
そこは、かつて苦しめられた「夏」と似たような環境です。植物自体の代謝が弱くなっているのも夏と同じ。植物が弱っているのに、土も濡れていて、通気が悪くてジメジメしていて、陽があたってポカポカと暖かい……だと? そんな環境はカビや雑菌の天国じゃないか。ソッコーで溶けたり根腐れしたりなんてアタリマエ。
冬越しのつもりが、実は本当に必要なことは夏越しと同じ。理想の環境は、暑くもなく寒くもない、日差しが強すぎもせず暗すぎることもなく、適度に湿気があって風通しが良いところ。
そんなベストポジションはどこ? 我が家では次の2箇所しかありません。
室内に取り込むなら、風通しは万全にしましょう。自然界では風が止むことなんてほぼありません。室内は人が通らないと空気が動かないので、24時間サーキュレータをつけっぱなしにしておくくらいがオススメです。
問題は気温と日当たりと水やり。単純に「室内」といっても千差万別で、日中の最高気温と夜の最低気温には注意。日当たりの良い窓辺はとくに寒暖差が激しく、昼は夏、夜は冬なんて環境になりがち。暖かい春か、ひんやりした秋のどちらかの環境を目指します。
人が生活する空間に置くなら「春モード」。徒長しないように日当たり良くして、夜は厚いカーテンの内側に置いて極度に寒くならないように。逆にふだんは人がいない「寒くてもいい」場所なら「冬モード」最低気温が5℃を下回らないところで、適度な明るさと水切り断水で休眠させる。
我が家の環境は完全に「春モード」です。温室と同じですね。しっかり日に当てて、水をやって、風を当てて、元気に育成することを目指していて、エケたちは紅葉せずにスクスクと大きくなるし、パキポやアデニウムは新芽が出てきます。
お住まいの地域の最低気温に耐えられるコだったら、むやみに取り込まずに外においておくのがオススメ。その際には、耐寒性を高めるためにできるだけ日当たりの良いところ。また冷えた空気は下に降りていくので地面からできるだけ離れたところを選んであげるのもポイントです。
屋外の寒さに耐えられるということは、その植物がもともと生育できる問題ない環境ってこと。なのであまり気を使うことがなく置きっぱなしでOKという楽ちんメソッドなんです。
とはいえ、ベストポジションは限られたスペースになるので、すべてを置くのは難しいですよね。どうしてもいい場所に入り切らず、室内に積み重ねたり、ビニールカバーを被せて凌ぐ場合は「一晩だけ」くらいの緊急避難と考えたほうが良いと思います。
ココからは具体的に、どんなコがどのくらい寒さに強いのか/弱いのかをざっくりまとめておきます。もちろん基準は、2段階の原因で分けた3グループです。
もっとも気をつけるべき「寒さにあたると死ぬ」タイプ。もともと、ブラジルやマダガスカル、東南アジアといった絶対に氷点下にならないような暖かい地域にお住まいの方々です。例えばパキポディウム、アデニウム、サンセベリア、ガガイモ、多くのユーフォルビア、一部のアロエ、メロカクタスやパロジアといったブラジル亜熱帯エリアのサボテン、リプサリス……など。
次に「凍ると死ぬ」タイプ。といっても上記に該当しないものはほとんどこのタイプです。凍ると言っても外気温が氷点下になったら即アウトかというと、それは種や育成環境やサイズによって変わってきます。水はそのままだと0℃で凍るけど、糖分を多く含むと凍る温度が下がります(理論上は-10℃くらいまでは凍らなくなります)。また大きいということは芯まで凍るのに時間がかかるのでダメージも外葉だけで済むこともあります。
このタイプの中で比較的弱いのは、カランコエ、コチレドン、クラッスラ、あとは葉っぱの数が少ないロゼットタイプのコ。エケベリアだとパリダだけ要注意。
逆に強いのは、アエオニウムやハオルチア、コノフィツムやリトープスなど。エケベリアの中でもエレガンス、カンテ、静夜、七福神あたりは強いと言われます。
ほとんどは「凍ると死ぬ」タイプなので-5℃を下回るようだと全滅する恐れがありますが、もともと、冬は完全に雪と氷に覆われるエリアにお住まいで、耐寒性が-20℃というモンスタークラスの植物もあります。
高山エリアに住むセンペルビウム、雪男のような佇まいのユッカロストラータは幾重もの乾いた外皮を断熱材にして中の生長点を守っている感じ。アガベフェロクスやストリアータも強く、ポリフィラなどの一部アロエや、ディッキア、ダドレアなどはむしろ高山植物です。ミセバヤは冬になると枯れますが、地中部が残って春にまた芽吹いてくる宿根性。球根タイプも同じ理由で寒さに強いと言われます。
寒さ対策は室内に取り込むのがベスト!と思いきや、室内は意外と難易度の高い環境。寒さに耐えられるなら、高難度の室内よりも、外に置きっぱなしのほうが楽ですよーというのがまずお伝えしたいことでした(ベテランさんの室内環境をググって見てみてください。断熱材にサーキュレータやLEDランプなど、結構イカついことになっていると思います)。
昨年2020年の冬はとくに厳しい寒さで、いつも余裕の我が家でも結構多くの犠牲者を出しました……。そんな「思いがけない急な寒波」を避けるためにはマメな天気予報のチェックも欠かせなかったりします。
でももっと大事なことは何か。
それは、植物は意外と頑丈で、寒さでダメージを負ってもまた復活してくれることがあるということ。彼らも賢いので、大事な成長点は最後の最後まで守っています。ダメージを負ったとしても諦めず、次の春に復活してくれることを信じて待ちましょう。
もちろん、ダメになっちゃうこともありますけどね……。
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