多肉植物コーナーだけでなく、サボテンコーナーにも、コーデックスコーナーにも、はたまたガーデニングコーナーのカラーリーフや花たちの中にも共通して見かける名前。それが「ユーフォルビア」。ユーフォルビアって、結局何なの? 多肉植物なの? そんな疑問に答えつつ、ユーフォルビアの魅惑の世界を紹介します。
ちなみに夏っぽい雰囲気だし実際多くのユーフォルビアが夏型なので初夏に特集していますが、中には冬型のコもいるのでご注意ください。
そう。ひとことで「ユーフォルビア」といってもその正体はまったく掴みどころがないように思えます。それもそのはずで、西はアフリカ大陸の南端から東は日本含めたアジアまで、その生息域は世界トップクラス。その広い生息域でそれぞれ独自に進化してきたため、ガッツリと多肉植物と化しているものもあれば、ふつうの草花のようなもの、低木になっているものまで本当に多様。その数は2000種あると言われていて、そのうち500種ほどが「多肉植物」に分類されます。
その草姿は多種多様ですが花はどのユーフォルビアもよく似ています。ユーフォルビアの花は1つの花に雄しべか雌しべのどちらか1本しかなくて(雌雄異花)その花が複数集まって花びらのようなもの(苞葉)に包まれ1つの花のようになっています。遠目に見ると花なのか葉っぱなのかはっきりわからないフラットでシンプルな花。ほぼどのユーフォルビアもこんな花を咲かせます。
花びらなどを捨てて雄しべと雌しべだけになってしまった花と、そのまわりのパーツで結局花びらっぽいものを作り直した経緯がとても不思議です。
また、もう1つの特徴、これはユーフォルビアをユーフォルビアたらしめている最大の特徴ですが、茎や葉っぱを傷つけると、白く濁った樹液が驚くほど潤沢に流れ出てくること。ミルクにも例えられ、その名を持つ種もいます。この白い樹液は毒性があって触れるとかぶれることもあるため、口や目に入らないようにするとか、触ってしまったら水でよく洗うなどの注意が必要です。
PUKUBOOKでは大胆にも「サボテン」カテゴリに載っているユーフォルビアですが、もちろんサボテンではありません。サボテンには「刺座」と言ってトゲの根本にふわふわの台座があるのが特徴でユーフォルビアにはそれがないのが見分けポイント。またユーフォルビアのトゲの多くは花が咲き終わった「花芽」をリサイクルしてトゲを作りますが、サボテンのトゲは葉っぱが進化したもので最初からトゲとして出てくるという違いもあります。
ただ、「刺座がないけどトゲがある」のはユーフォルビアだけじゃないし、「花芽のリサイクルじゃない生来のトゲ」をつくるユーフォルビアもあるので、ユーフォルビアと確定診断したいときには先の樹液を出してみるのが確実です。
そもそも分類名の和名がトウダイグサ科トウダイグサ属っていうんだけどそのトウダイグサって何でしょう? このトウダイグサは学名がヘリオスコピア Euphorbia helioscopia という種で、草姿が灯台(岬にあるやつじゃなくて、電気のない時代に油を入れて火をつけ明かりにしていた道具)に似ているのがその名の由来。
ってこれ、実は日本にもふつうに生えている草花なんです。いわゆる雑草として。開花期は4月~6月で、花が開くと遠目には緑がかった菜の花に見えますが、近くで見るとまさにユーフォルビアの花。異国情緒があって外来種かと思いきや、れっきとした在来種なんですね。
それほどまでに多種多様なユーフォルビア。実は多様すぎて私達の身近なところにも知らないうちに入り込んできています。もちろんそれは多肉植物じゃないこともあって、多肉植物好きになってもしばらく気づかないということもあります。たとえばこんなコたち。
いわゆる「ポインセチア」のことです。きっと世界一有名なユーフォルビアでしょうけど、僕ですらこの特集のために勉強するまでちゃんと知りませんでした……。
こちらはお花屋さんや街の花壇でよく見かけるユーフォルビア。多肉植物として流通しているわけではありませんが、日差しや乾燥に強いので頻繁にメンテできない街の花壇で重宝されています。
ホームセンターや観葉植物として流通しているものも見かけます。多肉植物にはくくられますが、あまり多肉植物専門店では見かけません。
最後に逆に身近になれないコたち。巨大なユーフォルビアです。これらは園芸用としてはめったに見かけませんが、植物園でよく見かけます。
多肉植物のユーフォルビアでトップクラスの人気種といえばまず「オベサ」ではないでしょうか。ここではそのオベサとそれによく似た玉系ユーフォルビアを集めてみました。
サボテンとユーフォルビアの見分けを難しくしているのがこの「トゲもの」と言われるトゲトゲシリーズたち。たしかに遠目には違いはわかりません。それぞれ海を隔てたアメリカとアフリカで、全く別の種が、似たような環境で進化して似たような結果になったという、自然の面白さを物語っているようです。
コアな人気があるユーフォルビアの系統。ゴツゴツとした根塊の先にニョロニョロとイモムシのような枝?葉っぱ?を伸ばし、タコのように見えるからタコモノ。自然の中ではその根塊は土の中に隠し、先のタコの足だけ伸ばしています。
ユーフォルビアはコーデックスの世界でもその名を馳せています。タコモノはそのコーデックスの中の1グループではありますが、ここではあえてコーデックスに特徴のある種を並べてみます。
どこにも分類し難い、ちょっとかわったユーフォルビアたち。
多肉特集をしてもコーデックス特集をしてもサボテン特集やガーデンフラワー特集をしてもどこにでも登場する「ユーフォルビア」。逆にこうしてユーフォルビアを幅広く特集しているところって珍しい気がします。生態系も園芸ジャンルも全く異なるコたちだけど、一同にあつめてみるとやっぱりどこか似ているし、似ている所があれば覚えやすく見分けもつけやすく、付き合いやすくなるんじゃないでしょうか。家の中のいたるところにいろんなユーフォルビアを置いてみてください。